円形脱毛症とは
円形脱毛症(alopecia areata)は後天性に類円形の脱毛斑を生じる疾患で、重症例では増悪・軽快を繰り返しながら脱毛斑が拡大することが多い疾患です。
外見上の印象を大きく左右するので患者さん自身の悩みは深く、生活の質(QOL)にも大きく影響します。
人口の1~2%に発症すると言われ、患者数は100~200万人と言われています。
明確な原因はまだ解明されておらず治療法が確立されていないのが現状です。
最近では新薬も登場し、治療の選択肢が増えました。専門医の診察を受け正しい治療を受けることが大切です。
症状
髪の毛が円形から楕円に抜け落ちてしまう病気です。大きさは10円玉くらいの単発のものから、多発したり、前頭、眉毛、体毛にまで及ぶ重症なものまで様々です。
原因
・自己免疫性疾患(橋本病に代表される甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、I 型糖尿病、重症筋無力症など)
・アトピー素因
・精神的ストレスによる影響
・遺伝的要素
など
疲労や感染症など肉体的、精神的ストレスが引き金となるとされますが、実際には明らかな誘因がないことも多いです。
種類
単発型:最も多い症例。約80%は1年以内に自然治癒すると言われていますが多発型へ移行する場合もあります。
多発型:円形脱毛斑が2つ以上現れます。適切な治療を行っても完治までに2年位かかる場合も多いとされ、拡大する場合もあります。
蛇行型:脱毛斑の結合が細長く、後頭部から側頭部の生え際にそって蛇のように広がるタイプです。
全頭型:数か所の脱毛斑がつながって、髪が完全に抜け落ちてしますタイプです。治りも悪く相当の時間がかかる場合が多いと言われています。
汎発型:頭髪だけでなく眉毛、まつ毛、体毛など、全身すべての毛が抜け落ちてしまうタイプです。脱毛症の中では最も重症な症状と言われています。
診断と評価
牽引試験(pull test)や、ダーモスコピーで頭皮を観察します。
活動期には、感嘆符毛・漸減毛・黒点を認め、慢性期では黄色点が中心となります。
爪にも変化をみることがあり、爪甲が点状に陥凹することがあります。
頭部全体の面積に占める脱毛巣面積の割合(S)と,頭部以外の脱毛の程度(B)により、重症度を決定しています。
S0:脱毛がみられない
S1:脱毛巣が頭部全体の 25%未満
S2:脱毛巣が 25~49%
S3:脱毛巣が 50~74%
S4:脱毛巣が 75~99%
S5:100%(全頭)脱毛
B0:頭部以外の脱毛なし
B1:頭部以外に部分的な脱毛がみられる
B2:全身全ての脱毛
日本皮膚科学会のガイドラインで、は重症度と疾患の活動性に基づき B に関係なく S2 以上を重症症例と考えています
治療
・ステロイド局注療法 病状が固定した S1 の単発型および多発型の成人例に第一選択として行う治療です。
・局所免疫療法 かぶれを起こさせることにより脱毛斑を治療する方法です。使用するSADBE あるいは DPCP は医薬品ではなく試薬のため、局所免疫療法は保険適応外になります。
・外用薬の使用 炎症や免疫機能を抑えるステロイド外用、発毛効果のある塩化カルプロニウム外用など
・内服薬 セファランチン、抗アレルギー薬、グリチルリチン,グリシン,メチオニン配合錠(グリチロンⓇ)、ステロイド内服など
・ステロイドパルス療法 成人の発症後 6 カ月以内で、重症かつ進行性の 円形脱毛症に対して本療法を行うことがあります
そのほかミノキシジル外用療法(保険適応外)、冷却療法、紫外線療法を併用することがあります。
参考文献 日本皮膚科学会HP
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa11/q13.html
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魚住総合クリニック 皮膚科