アトピー性皮膚炎について~診断・治療~

アトピー性皮膚炎の治療の最終目標(ゴール)

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021によると、治療の最終目標(ゴール)は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達しそれを維持することである。また、このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とする。とあります。そのために必要な診断、治療について説明します。

≪診断≫

1)瘙痒、2)特徴的皮疹と分布、3)慢性・反復性経過の 3 基本項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断します。

疑診例では急性あるいは慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断します。診断する医師は、除外すべき診断としてあげられた疾患を十分に鑑別でき、重要な合併症としてあげられた疾患について理解していることが大切です。

重症度評価法

重症度の正しい評価は適切な治療選択に必要です。全体の重症度評価や、掻痒の評価、患者さん自身による評価があります。


SCORAD による重症度評価法
Eczema Area and Severity Index(EASI)による重症度評価法
POEM 質問表(成人用)
Skindex 16
DLQI
CDLQI

診断や重症度の参考になるバイオマーカー

アトピー性皮膚炎や、病勢判定の参考となるバイオマーカーがあります。


血清IgE値 アレルギー性素因を表します。長期の経過における病勢を反映します。
末梢血好酸球 アトピー性皮膚炎の病勢を反映します。
血清LDH値 アトピー性皮膚炎の病勢を反映します。
血清TARC値 アトピー性皮膚炎の病勢を好酸球やLDHよりも鋭敏に反映します。
血清SCCA2値 アトピー性皮膚炎の病勢鋭敏に反映します。(15歳以下の小児)

≪治療≫

確実な診断と重症度評価を行い、治療を開始します。
治療の基本は、皮膚のバリア機能を補う治療(保湿)と、炎症を抑える治療 (抗炎症療法)です。患者さんのその時々の症状の程度やライフスタイルなどに応じて適切な治療を組み合わせます。

①薬物療法②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア③悪化因子の検索と対策の 3 点が基本になります。これらはいずれも重要であり、個々の患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切に組わせます。

・寛解導入療法:外用薬を使用し、かゆみや炎症を速やかに軽減します。
ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)、デルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏)、モイゼルト軟膏など。

特にモイゼルト軟膏は2022年に承認された新しいタイプの外用薬です。


大塚製薬株式会社患者指導用資料より引用

 

・寛解の維持:寛解に導入出来れば、維持を目指します。間隔を空けつつ定期的に抗炎症外用薬を投与することで再燃を抑制したり(プロアクティブ療法)、デュピルマブ(デュピクセント)皮下注の併用、保湿外用薬の継続などを行います。


サノフィ株式会社患者指導用資料より引用

 

・中等症以上の難治状態:外用療法に加え以下の治療の併用を検討します。シクロスポリン内服、デュピルマブ(デュピクセント)皮下注、バリシチニブ内服、紫外線療法など。

デュピクセントは中等症以上の難治の状態で寛解導入としての使用だけでなく、寛解の維持としての使用が推奨されています。

デュピクセントはペン型になっており患者さんが自己注射しやすい作りになっています。


サノフィ株式会社患者指導用資料より引用

 

このように症状に応じた治療薬の選択が重要になります。新薬も登場し、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢がとても増えました。

経験豊富な医師の元で適切な治療を行いましょう。アトピー性皮膚炎でお困りの方は一度ご相談ください。

参考文献https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2021.pdf

魚住総合クリニック 皮膚科

 

 

 

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