日差しが強くなってくると紫外線による皮膚のダメージ気になります。
紫外線による皮膚へのダメージは光老化と言われ、シミ、シワ、たるみの原因になるほか、皮膚症状の悪化や皮膚がんにも繋がります。
世界保健機関(WHO)では、「Global Solar UV Index-A Practical Guide」という
紫外線に関するガイドブックを出しています。
患者さんからよく質問をうける紫外線の疑問について、日本皮膚科学会HPや紫外線環境保健マニュアル2020を元に解説していきます。
地上に降り注いでいる紫外線の種類はどんなものがあるの?
紫外線(Ultraviolet、UV)は生物に与える影響を基に波長の長い方からUVA、UVB、UVCに分けられています。波長が短いほど傷害性が強く、UVCは殺菌灯などに使われていますが、幸い地球を取り巻くオゾン層により吸収され、結局地表に届く紫外線は少量のUVBと大量のUVAです。
紫外線は一年中降り注いでいます。
一般的に冬の紫外線は弱いですが、雪による反射により2倍近いばく露量となります。
曇でも油断大敵です。薄い雲ではUV-Bの80 ~ 90%が透過します。屋外では太陽から直接届く紫外線量と空気中で散乱して届く紫外線量がほぼ同程度になっています。標高が1000m上昇するごとに紫外線量は10 ~12%増加します。
*WHO:Protection against exposure to ultraviolet radiation1995
紫外線は身体にどんな影響を与えるのですか?
多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることがわかってきました。一時に大量の紫外線を浴びれば日焼け(サンバーン)を起こしてしまいます。また、少量でも長年にわたって浴び続ければ慢性障害として光老化が起こります。これは色素斑(シミ)、しわ、皮膚の良性・悪性の腫瘍として歳をとってから現れてきます。最近は更に紫外線が皮膚の免疫反応を抑えてしまうことも分かって来ました。
地表にいる私たちが浴びる紫外線のうち、UV-Bは地球上に届いている量は少ないのですが、皮膚の細胞のDNAに傷をつけてしまいます。
皮膚ガンのすべてが紫外線によって起こるわけではありませんが、顔や手の甲など長年にわたり日光を浴び続けた場所に出るガンとして日光角化症、有棘細胞癌、基底細胞ガン、メラノーマ(悪性黒色腫)があります。*日本皮膚科学会皮膚科Q&Aより
私たちは子供のうちに大量の紫外線を浴びていると考えられていますが、その影響は何十年もたってから現れてきます。
子供のうちから紫外線を浴びすぎないよう、外出時には帽子や日傘、長袖の衣類、サングラス、肌の露出部位には日焼け止めなどによる紫外線防御を心掛けることが大切です。
骨を強くするために日光浴が良いと聞くけど、、、
私たちの体にとって、紫外線とビタミンDは切っても切れない関係にあります。ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を2-5倍程度に増加させることです。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムを摂っていても十分吸収されず、カルシウム不足におちいります。
血中のカルシウムが足りなくなると、骨からカルシウムを溶かし出して供給するようになります。
乳幼児のビタミンD欠乏症が増加
日焼けを避ける若年女性が増えたことがあり、妊婦さんがビタミンD欠乏状態にあり、元々骨量の少ない赤ちゃんが多いうえに、完全母乳栄養やアトピー性皮膚炎に対する除去食、生後の日光浴不足が重なることがリスク要因と考えられています。
食品中のビタミンD含有量
1日必要量は10-25μgです。食物からの摂取や日光浴等が難しい妊婦さんや日常的に紫外線予防を行う妊婦さんは、生活スタイルによらず、信頼できる供給元からの、ビタミンDのサプリメントを利用することも一つの方法として勧められています。(*環境省 紫外線環境保健マニュアル2020より)
紫外線は、身体にとって良い面と悪い面を併せ持っています。良い面の1つがこのビタミンD生合成です。他の紫外線の良い点としては皮膚科では紫外線の性質をうまく利用して乾癬やアトピ-性皮膚炎などの治りにくい皮膚病の治療に光線療法を行います。
しかし、圧倒的に紫外線暴露による悪い面の方が多いと考えられるため、注意が必要です。
日本皮膚科学会では、あえて日光浴をしなくても日常生活で知らず知らずに浴びてしまう程度の紫外線で十分賄われると言われていますが、体質・体調にもよりますが、紫外線を極度に避け、全く外出しないとか、全身を覆う服装ばかりして生活することは好ましくありません。ビタミンDを食品やサプリメントからしっかり接種することを心がけ、適度な日差しを浴びる場合には、強い日差しが直接赤ちゃんに当たらないよう工夫して外出しましょう。日差しの強い9時~ 15時頃を避け(地域、季節により変動)、朝夕の涼しい時間帯に、薄い長袖を着せてあげ、帽子やベビーカーの日よけを利用するようにしましょう。赤ちゃんの皮膚は大人よりデリケートで、紫外線で受ける影響には個人差がありますので気をつけましょう。
小麦色の肌が好きなので日焼けサロンに行っています、、、、
日焼け(サンタン)は、私たちの体が紫外線による被害を防ごうとする防衛反応です。日焼けサロンでの日焼けは、人工的にUV-Bをカットして、UV-Aだけを照射することによって、サンタン(黒い日焼け)を引き起こすことによるものです。しかし、UV-Aの影響は、肌の色を黒くする(サンタン)だけではありません。 過剰な UV-Aのばく露により、水ぶくれやシミ等の障害が起こる可能性があるといわれています(WHO:Environmental Health
Criteria No.160、1994)。さらに、最近ではUV-AによってもDNAの傷が生じていることが報告されており、UV-Aが安全な紫外線とは言えません。
最近の WHOの報告では、サンベッド(日焼けサロン)の利用による悪性黒色腫が増加していることを指摘しており、18歳以下の使用を禁止するよう勧告しています。国際がん研究機関(IARC)ではサンベッドをタバコと同等の発がん物質と位置づけています。また、欧米・オーストラリア・ブラジルなど多くの国々が法律による規制を始めています。
紫外線の防ぎ方
①紫外線の強い時間帯を避ける。
②日陰を利用する。
③日傘を使う、帽子をかぶる。
④衣服で覆う。
⑤サングラスをかける。
⑥日焼け止めを上手に使う。
紫外線防止効果のあるサングラスや眼鏡を適切に使用すると、眼の紫外線ばく露を最大で90%カットすることができます。高齢者だからといって、極端に警戒することはありませんが、一般的に高齢者になると、眼への影響が大きくなりますので、晴天時などはサングラスや眼鏡などで保護することも有効と言われています。
日焼け止めの効果的な使い方
衣類などで覆うことのできないところには、大人は勿論のこと、子供も上手に日焼け止めを使うのが効果的です。塗る場所として顔はもちろんですが、意外と忘れやすいのはうなじや、耳たぶ、胸、首、手の甲です。これらの部位にもきちんと塗りましょう。
紫外線吸収剤(有機系素材)と紫外線散乱剤(無機系素材)
日焼け止めには数種類が組み合わされて入っています。紫外線吸収剤は、塗った際に皮膚が白く見えないという非常にすぐれた特徴をもっている半面、まれにアレルギー反応をおこす人がいます。一方、紫外線散乱剤は、少々白く見えますがアレルギーをおこすことがほとんどありません。子供用として使用するときや、 皮膚の敏感な方は、「紫外線吸収剤無配合」とか「紫外線吸収剤フリー」あるいは「ノンケミカルサンスクリーン」といった表示のものを選ぶと良いでしょう。
必要な量をきちんと使う
正しい使い方としては規定量、たとえば顔ですと真珠の玉2個分位を全体にのばします。また3時間に1回くらい塗り替えるほうが確実です。それではSPF値が高いものであれば多少とれても効果がありそうですが、あまりに高い数字のものはどうしてもサンスクリーン中の成分が濃くなりがちです。やはり状況に応じて適当な強さのものを、きちんと塗る方が良いでしょう。
紫外線を浴びたお肌はとても敏感です。お肌にうるおいを与える高濃度ビタミンC配合美容液や、UVA、UVBをしっかりカットする日焼け止めなど医療機関でしか購入できないドクターズコスメを多数取り揃えています。患者さんにあったスキンケアアドバイスも行っています。お悩みの方は皮膚科でご相談ください。
参照
全国の紫外線情報(紫外線予報)気象庁予測 今日の紫外線
気象庁 (オゾン層・紫外線の知識)https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-1ozone.html
紫外線環境保健マニュアル2020 https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf
世界保健機関(WHO)(Ultraviolet radiation and the INTERSUNProgramme)http://www.who.int/uv/en/
魚住総合クリニック 皮膚科