ステロイド軟膏は、炎症を抑えるために使われる外用薬です。ステロイド(コルチコステロイド)は、体内で自然に分泌されるホルモンで、抗炎症作用や免疫抑制作用があります。ステロイド軟膏は皮膚の炎症を緩和するために使用されますが、正しく使用しないと副作用が現れることもあるため、使用方法には注意が必要です。
1. 用途
ステロイド軟膏は、以下のような皮膚疾患に使用されます:
- アトピー性皮膚炎
- 接触皮膚炎
- 湿疹
- 乾癬(かんせん)
- 日焼け後の炎症 など
2. 作用
ステロイド軟膏は、炎症を引き起こす物質の分泌を抑えることで、腫れ、赤み、かゆみを軽減します。具体的には、免疫反応を抑制し、皮膚の細胞が過剰に増えるのを防ぎます。
3. 種類と強さ
ステロイド軟膏には、強さによっていくつかの種類があります。強さは通常、以下のように分類されます:
- 弱い(weak)
- 普通(medium): 日常的に使われることが多く、顔や敏感な部分に使用されることがあります。
- 強い(strong): 手足やその他の広範囲に使用されることが多いです。
- とても強い(very strong)
- 最も強い(strongest): 皮膚の深い部分にまで届くため、難治性の疾患に使われます。
使用する部位や症状の重さに応じて、適切な強さを処方してもらうことがが重要です。
4.ステロイド外用療法の留意点
部位によるステロイド外用薬の吸収率の違いがあります。
必要な部位に必要なランクのステロイド軟膏を使用することが大切です。重症の皮膚炎に対しては、重症度に応じたランクの薬剤を用いて速やかに寛解(かんかい)させた後、漸減(ぜんげん)あるいは間欠投与へ移行するようにし、さらにステロイド軟膏以外の軟膏(タクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏)の外用への移行に向けて努力する必要があります。
ステロイド外用薬の副作用
①全身的副作用
ストロンゲスト(I 群)の 0.05%クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏、40 g/日単純塗布(外用)はベタメタゾン1 mg/日内服以下に相当します*
実際、2 週間以上ステロイドで治療された小児のアトピー性皮膚炎の報告のメタアナリシスでは視床下部―下垂体―副腎系抑制がみられた患者割合は3.8%であり、副腎不全の症状との関連性は認めませんでした。
*島尾周平:皮膚科領域におけるステロイド療法とその問題点―特にその副作用を中心として―,西日皮膚,40: 5―24, 1978.より抜粋
②局所的副作用
- 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
- 血管が透けて見える(皮膚の血管拡張)
- 皮膚の色素沈着
- ニキビや毛包炎の悪化
ステロイドの有する免疫抑制作用,細胞増殖や間質産生抑制作用,ホルモン作用により,局所の副作用が起こりえますが、多くの局所副作用はステロイド外用薬の中止または適切な処置により回復します。
局所副作用の発現はステロイド外用薬の累積使用頻度が増加するために、年齢が上昇するにつれ増加しますが、すべての患者さんに発現するわけではなく、また 2 歳未満の患者の副作用の発現頻度は少ないです*よって、過剰に心配することなく、局所副作用の発現に注意しつつも、必要なステロイド外用薬を適切に使用することが勧められます。
*Furue M, Terao H, Rikihisa W, et al: Clinical dose and adverse effects of topical steroids in daily management
of atopic dermatitis, Br J Dermatol, 2003; 148: 128―33より抜粋
ステロイド外用に対して不安を感じている患者さん
マスコミや一部の医師による無責任なステロイド批判により、ステロイド外用薬は恐い薬という誤解が生まれてしまった時期がかつてありました。ステロイド外用薬に対する誤解から、ステロイド外用薬への恐怖感や避けることが生じ、アドヒアランスの低下がしばしばみられます。具体的にはステロイド内服薬による副作用との混同、およびアトピー性皮膚炎そのものの悪化とステロイド外用薬の副作用との混同などがあります。
また使用方法を誤ることにより、効果を実感できず、ステロイド外用薬に対する不信感を抱く事もあります。
その誤解を解くためには医師がしっかりと外用方法を説明し、患者さんに用法用量を理解してもらうことが必要です。
疑問点や不安が多いときには皮膚科を専門とする医師とよく話し合って、納得されてからお使い下さい。
ステロイド軟膏は非常に効果的ですが、適切に使用することが最も重要です!!
使用方法について不安な患者さんは、一度皮膚科専門医を受診し、是非ご相談ください。一緒に治療していきましょう。
魚住総合クリニック 皮膚科