なかなか良くならない湿疹。その症状本当にアトピー性皮膚炎?

アトピー性皮膚炎の治療において大切なことは、正しい診断がなされることです。

そもそも診断が間違っていたらいくら治療をしても良くはなりません。

アトピー性皮膚炎と鑑別が必要な疾患や、アトピー性皮膚炎の病態、治療について

日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎のガイドライン2021を元に解説していきます。

アトピー性皮膚炎の診断基準として

1.瘙痒
2.特徴的皮疹と分布
3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)

 

と、あります。しかしアトピー性皮膚炎と同じような見た目で、全く違う疾患があります。

除外すべき診断(合併することはある)
・接触皮膚炎 ・手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)
・脂漏性皮膚炎 ・皮膚リンパ腫
・単純性痒疹 ・乾癬
疥癬 ・免疫不全による疾患
・汗疹 ・膠原病(SLE,皮膚筋炎
・魚鱗癬 ・ネザートン症候群
・皮脂欠乏性湿疹

 

悪性リンパ腫のうち、特に菌状息肉症や、ヒゼンダニが皮膚に寄生している疥癬や、膠原病で悪性腫瘍が合併することもある皮膚筋炎には特に注意が必要です。菌状息肉症は皮膚生検をしても診断に至らないこともあり、複数回の皮膚生検でやっと診断がつくことがあります。アトピー性皮膚炎の治療をしていてもなかなか良くならない場合は、診断の見直しのために、皮膚生検を行い病理診断を行うことも検討されます。

日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎ガイドライン2021 より抜粋

アトピー性皮膚炎が正しい診断であったとしても、アトピー性皮膚炎は慢性の疾患であり、すぐに良くなるわけではありません。

皮膚科専門医の元で、経過を追いながら治療をしていくことが大切です。

 

 

アトピー性皮膚炎の病態

*sanofi HP「デュピクセント®を使用される患者さんへ」より抜粋

アトピー性皮膚炎では、「IL-4」、「IL-13」をはじめとするサイトカインという物質が皮膚の炎症を引き起こし、皮膚のバリア機能低下やかゆみを誘発します。見た目はきれいでも「炎症」が皮膚の奥底に潜んでいる可能性があります。炎症がひどくなる前に、きちんと治療することが大切です。

ガイドラインでは、〝外傷・搔破(そうは)による表皮損傷,抗原・刺激物質への曝露によって自然免疫と獲得免疫がそれぞれ賦活化され,Th2 型免疫反応を維持するサイトカインネットワークが構築されます。〟と書いてありますが、簡単に言うと、アトピー性皮膚炎では皮膚表面のキメが崩れてアレルギーの原因となる物質が入りやすくなり、皮膚の下で様々な炎症が起こっているのです。さらに、痒くて引っ掻く事によってさらにかゆみを誘導し、かゆい→掻く→バリア機能の破壊→かゆい→掻く→バリア機能の破壊、、、と、負のスパイラルに陥ってしまいます。

治療

治療はガイドラインのアルゴリズムに沿って治療することが必要です。

 

日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎ガイドライン2021 より抜粋

寛解導入

ポイント かゆみと炎症ををしっかり落ち着かせる

ⅰアトピー性皮膚炎の治療は外用療法が基本

ポイント 1FTU(ワンフィンガーチップユニット)とプロアクティブ療法

外用の量が少ない患者さんはとても多いです。それでは治療効果は十分発揮できません。

1FTU(ワンフィンガーチップユニット)
通常、皮膚科医はステロイド外用剤の塗布量に“FTU”という単位を使用し、1FTUは約0.5gとして患者さんに説明しています。

1FTUのイメージ

*マルホ株式会社 服薬指導に役立つ皮膚外用剤の基礎知識より抜粋 

医師の指導の元で正しい外用指導を受けましょう!

落ち着いたら2日に1回と徐々に減らしていきます。そうすることで炎症の山を徐々に小さくすることが期待できます(プロアクティブ療法)。

 

まずは医師の指導の元、正しい量と、正しいランクの外用を半年しっかり外用しましょう。

患者さんが自分でしっかり外用管理できるのが目標です。

それでもなかなか良くならない患者さんは診断の見直しや、治療のステップアップが必要です。

ⅱデュピルマブ皮下注や経口JAK阻害剤(バリシチニブ)内服を検討します

 

寛解維持→長期寛解維持

治療の目標
ガイドラインでは〝治療の最終目標(ゴール)は,症状がないか,あっても軽微で,日常生活に支障がなく,薬物療法もあまり必要としない状態に到達し,それを維持することである.また,このレベルに到達しない場合でも,症状が軽微ないし軽度で,日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とする〟とあります。

急な悪化がおこらないように、悪化の波を小さくして減らしていきましょう!

季節の変わり目や体調によって皮疹が悪いときもありますが、治療を継続してだんだんと悪化の波を小さくして正常にしていきましょう!

信頼できる医師とともに患者さんと二人三脚で治療を続けていくことが大切です。

 

新薬も登場し、患者さんの選択肢も広がっています。

アトピー性皮膚炎でお困りの方は一度皮膚科でご相談ください。一緒に治療していきましょう!

 

参考文献 日本皮膚科学会ガイドライン アトピー性皮膚炎ガイドライン2021 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2021.pdf

sanofi 患者さん向け診療サポート もっと知りたいアトピー性皮膚炎のこと https://www.support-allergy.com/atopy/ad/goal

marufo 患者さん・一般の皆さま向けサイト  アトピーのみかた  https://www.maruho.co.jp/kanja/atopic/suitable/external.html

 

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